2007年07月30日

3倍返しの誕生日

指定の場所に着くとペイントされた画家の車が乗り捨てられていた
バックミラーには2ヶ月前にプレゼントした「クラゲの標本」がぶら下がっている

車内をのぞくと後部座席に古い木箱が展示されるように置いてあった
ドアーを引くと何の躊躇もなく開いた
古い木箱を手に取ると下にはカーのキーが置いてある
木箱のフタをそっと開ける
中には何か象徴的な金属のクランクとロウソクが入っていた
フタの内側にメッセージが書かれたリボンがついている

「対談の植物園で待ってるよ」

ハンドルの脇には方向音痴の僕にわかりやすく書かれた地図
これから起こりうる事象のスウィッチを入れるようにエンジンをかける
カーステレオから僕の[su]という曲が流れ出す



「やれやれ、はじまったよ」

ゆっくりと深く息を吸い込む
とてつもなく深い海の中へ潜ろうとしているのに、僕はあまりにも少量の空気しか吸えなかった

車を走らせると、それまで静止していた目の前の「クラゲの標本」は虚空をひらひらとたゆたう
[su]の曲が終わると同時に植物園に到着した

この先一体何が起こるのか知る手段などどこにもない

植物園に入ると受付にいた初老の男が話しかけて来た
僕は一気に警戒を強める

「音楽家のgOさん、画家から手紙を預かっています」

そう言って赤い封筒の置いてあるテーブルを指差した

封筒の中には園内の見取り図に2カ所の★印が記された手紙と

「とても慎重に。※見つかると大変だ」

そう書かれたメッセージ
そして、図書館のカード

園内には受付の男以外には誰一人いない
静まりかえった園内をゆっくりとまわる
特に変わった様子はない

★印の箇所へ行くとそこには蛇口があった
勝手に操作されない為に取っ手のない蛇口が

辺りを見回してから僕は木箱のクランクを迷いなく蛇口へはめた

「ぴったりだ」

左へゆっくりと回すと勢いよく水が出た
同時に蛇口に詰め込まれた次なるメッセージの手紙が飛び出した

そして離れた場所にあるもう一カ所の蛇口を回した
そこからは水は出なかった
しかし静寂の園内に水の音が流れ出した
僕は慌てて水の音のする方へ行くと、人工的に作られた園内の「滝」が流れ出していた。

どうやら僕は「水に関する特別な権利」を頂いたようだ

蛇口から出た手紙には
「2階レファンス室、星百科大辞典/Rバーナム書 P710」
と書かれていた

これだけでは終わらないみたいだ

僕は地図を頼りに図書館へ車を走らせた
カーステレオからは水の音がただ流れていた

2ヶ月前のサプライズに使った図書館だ
同じ場所を使って次は何を企んでいるのだろう
僕は画家の仕組んだ「水流」にただ流されるだけだった

自我などいらない
自己をいかにして消せるか
JELLY FISHのように


2階レファンス室
図書館のカードを持っていなければ入れない
例の手紙に入っていたカードを見せ中へ入る
文字通り本に囲まれた素敵な空間
レファンス室中2階に一際分厚い「星百科大辞典」を見つける
710ページに近づくにつれ大男が僕の胸を内側からノックする

「くじら座」の項
「一階一般図書 BEYOND/ベンソン・マイケル P187
[深海の白くま] をはさんでおいたよお誕生日おめでとう 」

そう書かれたメッセージ

「3倍返しか。。」

一階一般図書の検索端末を利用して「BEYOND/ベンソン・マイケル」を探す
モニターに出された文字だけの情報は疲れきった僕には記号にしか見えない
隣に居た2人組の小学生に

「この本を探してくれないか?」

と話しかけると2人はまるでクラゲをみるような顔で僕を見ている
何やらこそこそと話してる

「もしかして君たちは蒼の画家のまわし者じゃろ?」

僕がそう言うとさらにきょとんとした
小学生は黙って僕の前の端末のキーボードを叩く。すると本棚を示す画面に切り替わった

「お、深海の白くまはここだね!」

2人組の小学生は「このクラゲ人間とはこれ以上かかわらないほうが良さそうだ」
といったような表情でどこかへ行ってしまった


「BEYOND」は月の写真集だった
P187を開くと[深海の白くま 台本]とかかれた台本がはさまっている

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[深海の白くま 台本]

1F 受付カウンターへ

gO : 僕はどうやら白くまっぽい物を落としてしまったようだ
図書館 : いつですか?
gO : 今日です。海の生き物の本の辺りだと思います
図書館 : それは白くまでもあり、深海生物でもある物ですか?
gO : Exactly!!
館内全ての人 : Happy Birth Day!!!

「こうして深海へ辿り着く。いつだってそれはとても難しい」
ナレーションが言う

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台本通りに僕は進める
リアクションは一つも台本通りではなかったしナレーションも入らなかったけど何とか受け取る事ができた

受け取った箱の中には「白くまでもあり、深海生物でもある」画家の立体作品が3匹入っていた


200707302245000.jpg


水のようにナチュラルで中心のない生物が、まじりけのない青い目で僕をまっすぐ見つめる
何も「期待」などせずにまっすぐに

そして「水の所有」
僕にしか出せない「水」がある
なんてシンボリックなんだ


その夜死ぬ程雨降った
帰りの道路は川になって
車が水を裂き、波が押し寄せる
すべての境目がなくなり
車も街も音も自我も水に飲み込まれた


このクランクは効果絶大のようだ






























































posted by gO at 23:00| Comment(6) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
オタンジョウビ オメデトウ ゴザイマシタ☆

読んでる私までワクワクしちゃうプレゼント。どんな命がけの散歩なのか、ひそかに楽しみにしていました。素敵。
Posted by norico at 2007年07月31日 00:53
お誕生日だったのね。おめでとう!
Posted by あや at 2007年07月31日 03:07
おたんじょうびの日おめでとう、gOくんおめでとう★
ふふふふふ。
お互いの、というか、
周りのうちらのの期待もあるのよね。
どんどん、ハードルあがってる?
すてきね、すてきなおたんじょうび★しあわせのため息を深海で深くついてくださいませ。
おめでとう^^
Posted by SO at 2007年07月31日 08:51
noricoさん
ありがとう。コメント嬉しいです。
noricoさんもワクワクしたみたいで少しはこの気持ちが伝わったようで良かったぁ。

あやさん
どもありがとう。嬉しいわぁ。。

SOちゃん
お誕生日の日ありあと。
歳を重ねるごとにきっとハードになるから大変ね。。(笑)



Posted by gO at 2007年08月01日 01:31
こんにちは。goさん。
さいきん雨がふらない日がつづいていますがお元気ですか。

お誕生日おめでとうございます。
冒険みたいなプレゼントですね。

ステキすぎです。

ちなみに今日の宵はなんとか流星群がやってくるそうです。願いごとかけ放題です。なにもかも水に満たされるようにお祈りしようとたくらんでイマス。
Posted by toshie at 2007年08月12日 21:32
toshieさん
コメントありがとうございます。
毎日暑いですね。。

毎年、誕生日はまさに冒険です。
プレゼントに辿り着いた時の気持ちを忘れぬようにワインで記憶へ閉じ込めるのです。

流星群見ました!
僕も全てが透明の水に満たされるように願いをかけました。

そして今日は打ち水をしました。

Posted by gO at 2007年08月14日 18:50
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